ドラマ「ミスター・サンシャイン」 まだまだ語る

韓国☆エンタメ

前回は「ミスター・サンシャイン」のメインキャラクター5人についてあれこれ書きましたが、俳優さんがらみでもう少し書きたいことがあります。

主人公のユージン・チョイは朝鮮出身のアメリカ人で米軍の一員として朝鮮に赴任してきたという設定から、韓国語以外に必然的に英語のセリフが出てきます。また、工藤ひな、ク・ドンメ、キム・ヒソンは日本に住んでいたことがあるという設定なので、日本語のセリフも出てきます。そして工藤ひなはなぜかフランス人からフェンシングを習っているという設定で、この2人の会話はフランス語でした。この他にも日本人や親日派の役の人がたくさんいました。回によっては、日本語と英語で全体の3分の1を占めることもあり、俳優さん達は撮影が始まるかなり前から各言語のネイティブの方から学んでいたそうです。撮影前からとても努力されたんでしょうね。

でも、日本人が出てくるドラマや映画を見ていつも思うのですが、なんで日本人の俳優さんを使わないんでしょうね? もちろんメインの登場人物に日本人を当てられないというのはわかります。でも、日本軍人Aとか東京の街の人Bみたいに個人名すらついていない役もあるわけで、その辺の役なら韓国在住の日本人を出演させてもいいような気がするのですが・・・。まあ、韓国の方で日本語を知っている人がどれだけいるかを考えると、そんな端役がしゃべる日本語が上手かろうが下手であろうがどうでもいいのかもしれませんが、日本人として作品を見ると、日本語のセリフの意味もセリフの中に含まれる感情も瞬時に理解できてしまうだけに、セリフの言い方にダメ出しをしたくなったり、時には「私が代わりにやろうか?」と画面に突っ込んだりしています🤭 そうなると、ストーリーに集中できなくなってしまうんですよね。

「ミスター・サンシャイン」は日本語のセリフが多かっただけに日本語力という観点から見ても興味深かったです。「ございます」が「ご”じゃ”います」に、「見つけた」が「見”ちゅ”けた」になっていないか、韓国人にとって発音が難しい「ざ」や「つ」あたりの発音がどこまでお出来になるのかが私のチェックポイントでした。

ユ・ヨンソクさんは日本語のセリフがかなり多かったですが、流暢ではないけれどドラマの展開を邪魔しないぐらいの日本語は話していました。撮影の合間も日本語のセリフをずっと練習していたそうですし、半年ほどの勉強であそこまで話せるようになるなんて相当努力されたんでしょう。ピョン・ヨハン君も量は少なめだけど時々日本語のセリフがありましたが、ユ・ヨンソクさんレベルには至らないまでも不自然には聞こえない日本語を話していました。

ビョンホンssiはもともと大学で語学を専攻されていたこともあり、いわゆる語学脳をお持ちなんでしょう。彼の英語の実力はハリウッド映画に何本も出演していることで本物なのは言うまでもないですが、日本語は単語や短い言い回しは知っていても、自分の頭の中で文章を組み立てて話せるほどではないと思います。ですが、このドラマで日本語の長セリフが何回もありましたが、発音も抑揚もお見事!の一言でした。最近東方神起の2人やジェジュン君など日本語が本当にお上手な韓国のアーティストが増えてきている中で、たまにビョンホンssiが来日して日本語で一言コメントを言ってもイマイチだなと思うことが多かったのですが、さすがビョンホンssi、キメる時はキメてくれます!

ですが、このドラマの中でとびぬけて日本語がお上手だったのはキム・ウィソンさん。大ヒット映画「暗殺」「新感染 ファイナルエクスプレス」や、ドラマ「W」では顔がなくなる気持ち悪い役をしていたベテラン俳優さんです。このドラマでは朝鮮を日本に売り渡す親日派の大物役で、あまりの極悪非道ぶりに「この人、このドラマの後普通に生活できるのかな?」と余計な心配をしてしまうぐらい、それはそれは悪い人の役でした。

話を元に戻しますが、この人が初めて日本語のセリフをしゃべった時、私、思わず画面にかぶりついたんです、とうとう本物の日本人俳優が出てきたと思って。どう聞いてもネイティブの日本語にしか聞こえませんでした。そしてそれがキム・ウィソンさんだとわかった時は、「この人、日本語しゃべれる人だったんだ」って思いました。でも、後から、この方、日本語が全くわからない方だと知って驚愕しました。「半年間ひたすら日本語のセリフだけを暗記して繰り返していたらこんな風になった」とご本人はおっしゃったそうですが、それは他の俳優さんだって同じこと。極め方がハンパじゃないです。ホント、どう聞いたって日本語を全く知らない人が話しているなんて思えませんでした。

そして、言葉の面ですごく努力されたであろう人がもう1人。工藤ひな役のキム・ミンジョンさんです。ひな役をすることになっていた別の女優さんが撮影が始まる直前で降板して、急きょひな役に抜擢されたそうなのですが、そんな時間的余裕がない中で英語、日本語、そしてフランス語のセリフにまで取り組まなければならなかったことを考えると、その覚悟にもう脱帽です。フランス語はわかりませんが、英語も日本語もしっかりこなされていました。財力のあるホテルの女主人らしく、ちょっと気取った物言いをしないといけない場面でも、それらしい雰囲気を醸し出していました。

そしてそして、言葉の点で面白かったことが他にも。アメリカに住んでいてユージンとも知り合いの日本人の軍人でモリ・タカシという登場人物がいるのですが、英語が話せる設定なんですね。この人がしゃべる英語が思いっきり日本人の英語の発音なんですよ。McDonald’sを「マクドナルド」と全て母音を入れて発音してしまう日本人の癖。これをわざと強調した感じで英語のセリフを言っていました。もちろんこの役をしていたのは韓国人。韓国語は母音の入らない発音があるから、一般的に韓国の人は英語の発音はお上手なはずなんです。だから余計に日本人のまねをした発音で英語をしゃべっていたのが面白かったんです。妙なところで細部にまでこだわっていたんですね。

それと、日本語を話せる設定の西洋人の俳優さんがいたのですが、この人の日本語が日本人役の韓国人俳優の日本語よりもずっとずっとお上手だったのも笑えたし。このように、このドラマ、ストーリーとは別のところでくすっと笑える場面が時々ありました。

言葉にまつわることだけでこんなに長く書いてしまいましたが、他にも強調しておきたいことがあります。それは映像の美しさです。特にドラマの前半では自然の中で撮影された場面が多いのですが、ため息が出るぐらいきれいな景色がいくつもありました。あんまりこういうことをしちゃいけないんでしょうけど、1つだけキャプを入れておきます。

ミスターサンシャインの1シーン

かなり上空から撮影されているようですが、川の底が見えるのがわかりますか? ものすごい透明度の高い川なんでしょうね。ドラマの中では一瞬でしたが、見とれてしまいました。韓国人の方のブログによると、韓国の南部の方、慶尚北道や慶尚南道で撮影されたシーンが多いようです。

もう1つ私が見とれたのは建物です。誰かの家であったり、公的な建物であったり、いろいろなのですが、とにかく韓国の伝統家屋がたくさん出てきます。その1つ1つがため息が出るぐらい美しくて。撮影場所にものすごくこだわったドラマだと思いました。ドラマの前半で既に、「ここ絶対行きたい!」って思う場所がいくつもありました。

そして、なんと言ってもセリフ回しです。キム・ウンスクさんという「シークレット・ガーデン」「太陽の末裔」「トッケビ」など大ヒットドラマをいくつも書いている脚本家さんの作品で、ビョンホンssiが出演を決めた理由の1つもこの脚本家さんだったからだとか。今回は英語が朝鮮に入ってきた時代という背景もありアルファベットで遊ぶセリフだったり、ウィットに富んだセリフがいくつもあって楽しかったです。特に、ある単語のアルファベット1字を入れ替えて別の単語にして気持ちを伝えるシーン(うーん、こんなまどろっこしい言い方じゃなくてちゃんと説明したい!)には、その発想のすごさに感動しました。

さて、ここまで読んでこのドラマに興味を持たれた方がいらっしゃるかもしれません。が、最後に1つ、お伝えしておかなければならないことがあります。

それはこのドラマのストーリーについてです。ここまで私はこのドラマの楽しい面ばかり書いてきましたが、これはあくまでも日本が朝鮮を侵略した時代を基にした歴史ドラマです。もちろんフィクションですが、ストーリーの中には実際に起こったことも伊藤博文など実在した人物も出てきます。このドラマの、特に前半3分の1、そして最後の3分の1では、日本軍による目をそむけたくなるような残虐な行為のシーンがたくさん出てきます。それが本当にあったことなのかどうかは私にはわかりませんが私にはかなりショックで、第19話を見た後なんてあまりにひどい描き方に1週間ずーっと気分が沈んだままでした。正直、ビョンホンssiが出ていなかったら、私は辛すぎて最後まで見られなかったと思います。それだけに、なぜビョンホンssiがこのドラマに出てしまったのかという疑問はいまだに心の片隅にあります。今まで政治的な問題がからみそうな作品には出たことがなかったのに。世界レベルで活躍する俳優として、微妙なテーマはあえて避けているんだと信じていたのに。

日本では今のところNetflixでのみ視聴できますが、この先CSやBSでこのドラマが放送されたら物議を醸すでしょうね。放送する勇気のある局があるかどうか、私は怪しいと思っています。ドラマが始まる前は久しぶりのビョンホンssiの作品ということで、NHKが放送してくれないかな、なんて思ったりもしましたが、見始めてすぐそれが夢物語だと悟りました。地上波はどこも無理でしょう。

出演している俳優さんも素晴らしいし、映像もきれいだし、スケールの大きいドラマなんですけどね。出演俳優それぞれのファンの方々には一度ご覧になることをオススメするけれど、一般の方にはやっぱり「みなさん、ぜひ見てください」とは言えない、かな。すごーいジレンマだし残念なんだけど。

ビョンホンssiびいきでわがまま採点は最初から満点の5点をつけて、私が見た歴史ドラマで一番の作品にする気満々だったのですが、これだけ複雑な思いをしてしまった以上さすがに一番の作品にすることはできず、悩んだ末4.75点とすることにしました。

でも、せっかく最後まで見たし、ドラマの撮影地となった建物や場所には興味があるので、今年の秋旅と来年の春旅ではいくつかロケ地巡りをして楽しもうと思っています。

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