昨年一番ハマったドラマ「ミセンー未生-」 つづき

韓国☆エンタメ

普段、ドラマの感想を書く時は、あらすじは書かないし、感想も極力ネタバレにならないように気をつけながら書いているのですが、「ミセン-未生-」だけはちょっと語りたい気分です。

なので、このドラマを真っ白な気持ちで見ようと思っている方は、ここから先は読まないでください!!! かなりネタバレする予定です。

!!!ネタバレ注意!!!

主人公のチャン・グレは囲碁のプロになるために子供の頃から囲碁の世界だけで生きてきた。それが家庭の事情で囲碁を諦めざるをえなくなり、人生の目標を失ってしまう。今更社会に出て働こうにも、高卒だし資格もない。コンビニや代行運転といったアルバイト経験しかないから定職にはつけなかった。それがある時一流商社にコネで入社できることになった。但し他の同期は全員正社員なのに対し、グレは2年限定の契約社員。同期は一流大学を出てお金と時間をかけて資格やスキルを身につけて入ってきた人ばかり。最初は同期からも周りからも「何もできないお荷物な人」とみなされ、疎外感を味わうグレ。努力するのが当たり前の世界で、やれと言われたことを一生懸命こなし、すべて吸収し、言い訳をせずひたすら耐えて、なんとか周りについていきたい、仲間に入れてもらいたいと必死でくらいついていきます。

そんなグレにとってのキーワードは「ウリ (私達)」という他愛もない言葉でした。2話でグレが他人がしたミスの濡れ衣を着せられた時、グレの上司、オ課長が他部署の課長に「おまえの部下のせいで、うちの奴が怒られたじゃないか」と抗議します。課長が自分のことを「うちの奴」と言っただけで、グレは課長に「ウリ」の仲間に入れてもらえたとうれし涙を流します。その後もグレは、周りをよく観察し少しでも周りの人の役に立てるようにと、自分ができる仕事を自ら探し出し、黙々と努力を続けていきました。そんなグレを見て、周りの人達も少しずつグレを仲間として受け入れてくれるようになっていきました。

そして13話で社長に「どうしてこの事業をやろうと提案したんだ?」と尋ねられた答えとして、グレが「我が社(ウリ フェサ)だからです」と自ら「ウリ」という言葉を使ったんです、堂々と。「ウリ」というこの短い簡単な単語をグレがどんな気持ちで聞き、どれだけ憧れてきたかをドラマの進行とともにずっと見てきたので、彼が自ら「ウリ」と”言えた”瞬間、私はボロボロ泣いてしまいました。我が子の成長を見ているようで。まさかこんな単純な言葉に泣かされるとは思ってもみませんでした。でも、このドラマはそこまで感情移入させられてしまうぐらい、登場人物達の心情が丁寧に描かれているんです。

あと、このドラマのすごいところは、登場人物達のせりふの中に、人生訓のような重みのある言葉がちりばめられていることです。名言だと思ったせりふをいくつか挙げてみます。

「危険に飛び込むだけが勇気ではない。飛び込みたい誘惑に耐えて自分の道を進むのも勇気だ。」

「逆流が起きても動じてはならない。自分の流れを守ることが相手への逆流になる。自分の流れを守る姿勢こそが最高の防御となり攻撃となるのだ。」

「過ちを追及する時は相手を憎んではいけない。憎しみは人の目を曇らせるんだ。」

「俺達は成功とか失敗ではなく、死ぬまで扉を開け続けていくんだと思う。」

「成功とはどんな意味付けをするかで違うと思う。」
 (つまり、他人から見たら失敗に見えても、自分が満足できる点を見つけられれば、それはある意味成功だ、ということ)

いかがです? 深い言葉だと思いませんか?

また、ドラマの中盤あたりから「날아 (Fly)」という挿入歌が何度も入ってくるんですけれど、この歌の曲調といい、歌詞といい、ドラマの内容にマッチしていて私は大好きでした。

이승열 – 날아

サビの部分を私なりに解釈するとこんな感じです。

そんなところで立ち止まるな
君がいるべき場所はそこじゃない
さあ立ち上がってもっと遠くへ飛んで行くんだ
どれだけ時間がかかるかわからないけれど
君なら耐えられる
翼を広げて飛べ

「もっと頑張らなきゃダメだ!」って無理やり押し出されるのではなく、「君ならできるよ。やってごらん」って信頼して優しく背中を押してくれる感じ、ですよね? この曲を聴くと、元気が出て前向きな気持ちになれます。

最後に、このドラマに出てくる俳優さん達について。

まずはなんといっても主人公チャン・グレ役のイム・シワン君。彼のことは「太陽を抱く月」や「赤道の男」でまず俳優さんとして認識して、後からK-popグループZE:Aのメンバーだと知ってビックリ。YouTubeとかで映像を見てもまだ、歌ったり踊っているのがシワン君だと信じられないぐらいの衝撃でした。あまりにもドラマで見ていたイメージと違う世界にいるので。俳優さんはよく「普通の人の役が一番難しい」と言いますが、「ミセン-未生-」のチャン・グレはまさに普通、いや、普通以下のさえない若者。そのグレの役を何の違和感もなく演じられるシワン君ってすごくないですか? 普段バンバンスポットライトを浴びている人なのに、そんなオーラを完全に消せるなんて、なかなかできることじゃないと思います。イム・シワン君、これからも出演作品を追っていきたい俳優さんの1人です。

オ課長役のイ・ソンミンさんは私は全く知らなかったのですが、ベテランの俳優さんなんですね。「ミセン-未生-」で大ブレイクしたそうで、その後CM、ドラマ、映画と主役級の扱いで出られています。去年の興行成績第2位の映画「検事外伝(邦題:華麗なるリベンジ)」ではカン・ドンウォンさんの敵で、「ミセン-未生-」のオ課長とは正反対の悪徳政治家の役で貫録のある演技をされていました。

もう1人、大ブレイクしたのがグレの同期、ハン・ソンニュル役のピョン・ヨハン君。ちょっとうっとうしいんだけど憎めないソンニュルのキャラを軽快に演じていて、ある意味とても目立つキャラでした。ヨハン君も「ミセン-未生-」の後、「六龍が飛ぶ」や映画にどんどん出るようになりました。

やはり社会現象になったドラマだけあって、この3人、そして営業3課代理役のキム・デミョンさんも2015年に「ミセン-未生-」で演技に関する賞を取っています。このドラマ自体も賞をたくさん取っていて、東京ドラマアウォードでも2015年の海外作品特別賞を受賞しています。

このドラマ、韓国の3大テレビ局の制作ではなく、多分3大テレビ局が制作するドラマよりも低予算で作られていると思います。その分、俳優さん達もあまりお金のかからなさそうな人が多かったように思いますが、ドラマを見ていて、いいドラマを作ろうという一体感というか気迫を感じました。それが完成度の高い作品になった要因の1つのような気がします。

私自身、このドラマを通して、自分が会社で周りからどう見られているか、後輩に対してどうあるべきか、とかいろいろなことを考えさせられ、自分にとっても勉強になるドラマでした。会社でどんな立ち位置にいようと、このドラマを見ればきっと誰でも思うところはあるだろうし、今まで気づかなかったことに気づけると思います。そういう意味でも、このドラマ、本当にオススメです。ドラマわがまま採点はもちろん5.0点満点でした。

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