束草(ソクチョ)に行った第2の目的は雪岳山(ソラクサン)でした。
韓国の多分時代劇ドラマだったと思うのですが、何度か「ソラクサン」という言葉を耳にしたことがあって、なんとなく憧れていたんです。
雪岳山に行くためにわざわざ束草に行きはしなかっただろうけど、束草まで行くのなら雪岳山に行かないわけにはいかないと思って。
ググってみたら、本当の頂上の大青峰(テチョンボン)は本格的な登山だから素人は無理だけど、蔚山岩(ウルサンバウィ)という所なら登山の装備がなくても片道2時間で行けるとのこと。
それを鵜呑みにして、日本でも韓国でも生まれてこの方まともに山なんて登ったことがないのに行ってみることにしました。
旅の後半になったら体力がなくなってしまうからと、束草から旅をスタートすることにし、そして旅行の2日目に行く計画を立てました。
でも、この時はまだ知らなかったんです、7月の韓国は梅雨だってことを。
知ったのは出発のほぼ1週間前。既に飛行機も宿も手配した後で変更は不可。
迷ったのですが、スーパー晴れ女を自負する自分の運に賭けてみることにしました。
ですが、束草に着いてみるとやはり2日目は1日中雨の予報で、雪岳山に行くのは断念。
代わりに行った江陵(カンヌン)はやはり雨でした。天気予報当たりすぎ。
2日目の夜に翌日の天気予報を見てみると、午後からまたずっと雨の予報になってる。
でも、その次の日にはもう束草を出るので、雪岳山に行くなら明日しかありません。
ということで、朝一で蔚山岩まで行って雨が降り出すまでに麓まで下りてくる計画で決行することに。
翌朝、ホテルの前のバス停から7番バスに乗って終点の雪岳小公園バス停に8時40分に到着。
空はどんより曇っていましたが、すぐに雨が降ってきそうな気配ではありませんでした。
バスを降りて即雪岳山の入口の門(上の写真)をくぐり、トイレを済ませ、まずは新興寺(シヌンサ)を目指しました。

これが新興寺の入口の一柱門。でも、新興寺の観光は後回し。
バスを降りてから10分ほどで新興寺の前を通過しました。

これが現地にあった地図。
所要時間の目安は新興寺からフンドゥル岩までが50分、フンドゥル岩から蔚山岩までが更に50分とのこと。

要所要所にこのような案内表示板が置かれているので、道に迷うことはありません。

新興寺を過ぎて15分ほどのところで舗装された道から砂利道に変わりました。でも、まだ普通の道です。

この標識を見た時はギョッとしました。
「落石注意」日本でも時々見かけますが、これって注意しようがないじゃんって突っ込みたくなるのは私だけ?
写真を撮ってまたすぐに歩き始めます。とにかく雨が降り出すまでに行って戻ってこなきゃと、雨とタイムレースをしている気分でした。
5分もしないうちになだらかだった砂利道が石段の山道に変わり、

ここから10分しないうちに

道の勾配がきつく、石段の高さも高くなってきました。でも、まだ体力には余裕がありました。
こんな道が10分ほど続いた後、フンドゥル岩に到着しました。

真ん中の大きな岩の上に載っている楕円形の石がフンドゥル岩(バウィ)。
この写真だと小さな岩のように見えますが、人の背丈よりも高いんです。

上の写真で人の左側にある石がフンドゥル岩。人の背丈の倍近くあるのがわかるでしょう?
不安定な場所にあるので人の力で揺らすことができるけれど、何人で揺らしても落ちないんですって。
人が立っている平らな岩の上には

このように人の名前らしきものが漢字でたくさん彫られています。

すぐそばの石壁にも文字がたくさん彫られています。
5m以上高さがありそうなこの壁にどうやって文字を彫ったのか、何が書かれているかは???
フンドゥル岩の横には継祖庵(ケジョアン)があるのですが、圧巻なのがその石窟。

この巨大な岩だけでもビックリですが、その中はなんと

お堂になっていて仏様もいらっしゃるんです。
この場所の位置関係はこんな感じ。

写真中央にある丸い岩がフンドゥル岩、その背後の右側が継祖庵、左側が石窟、そして一番奥にそびえ立っているのが、なんとこれから向かう予定の蔚山岩。
えっ、あそこまで行くの? マジで?
新興寺からここまで50分の目安となっているところを頑張って40分で歩いてきました。
蔚山岩まではここから50分の距離のはず。なのに、はるか彼方にあるように見えます。
この景色を見た途端、休憩している場合じゃないと悟り、また歩き始めました。

フンドゥル岩を出てすぐのところにある案内表示。
蔚山岩まであと1kmと書いてあります。
1kmなんてすぐじゃん。なのに50分かかる? どういうこと?
その答えはこの表示を過ぎて2分も経たないうちにわかりました。

道が道でなくなったんです。
階段代わりの石段が平らではなく、足を置く位置を間違えると体重をかけた途端、こけるか足をぐねるかのどちらか。
だからひたすら地面と石を見て足を置いても大丈夫な位置を探さないといけなくなったんです。
それに、時々よじ登らないといけないぐらいの大きなサイズの岩も出てきたし。
フンドゥル岩までの道中の半分か、それ以下のスピードでしか前に進めなくなってきました。
これはキツイなとちょっと不安になってきた時、もう1つ恐ろしい想像が頭に浮かんでしまいました。
ただでさえ足場の悪い場所なのに、ここでもし雨が降ってきたら・・・と。
土はぬかるむだろうし、岩は滑るし、私1人だし、マジやばい。。。
想像しただけで恐怖を感じ、そこから先はひたすら「雨降るな、雨降るな」と念じながら登っていました。
でも途中で

見晴らし台っぽい場所を見つけると、好奇心で見に行ってしまうんですよね。

ここから見た蔚山岩。まだ相当離れて見えます。

同じ場所で別の方向を見てみるとこんな景色。
灰色の低い雲を見てますます不安になるだけでした。
で、即見るのをやめて元の道に戻り、先を進みます。

道がとうとう岩だけになってしまいました。
足を置く岩をますます慎重に選ばなければならなくなり、完全にスピードダウン。
フンドゥル岩を出発して30分ぐらい登ったところでやっと岩がなくなりました。
で、代わりに目の前に現れたのがこれ。

どこまで続いているかもわからない階段。
ここまでの岩登りでかなり体力を使い疲れてきていたので、これを見た時はげんなり。
でも、きっとこれを登りきれば頂上に着くだろうと信じ、頑張って登り始めました。
少なくとも足を置く場所は平らだから岩を登るよりましだと言い聞かせて。
で、12分後やっと階段が終わって頂上に着いたかと思ったら・・・

新たな階段が登場。しかもこの階段、上までずっと続いてる・・・。
既に体力は限界寸前まで来ていて、正直、泣きそうになりました。
でも、ここで天の助けが。
この日初めて前から人が歩いてきた、いや、上から下りてきたんです。
その韓国人のおじさん、へとへとになっている私を見て「お疲れさま。もう着きますよ!」って声をかけてくれました。
この一言、どれだけありがたかったか!!!
これさえ登りきれば終わるとわかり、上がらなくなってきていた足を動かし、ゆっくりと上がって行きました。

ご覧のとおり、階段の外はほとんど垂直の岩壁で、柵があるものの、もしふらついて柵から落ちたら間違いなく命はないので、一歩一歩集中しながら。
この階段、数えていないですが、800段ぐらいあるとかないとか?
そして、フンドゥル岩を出発してから本当に50分後、ようやく蔚山岩のてっぺんに到達。

この岩、鳥が留まっているみたいに見えます。
別の角度から撮った景色。

雲が完全に下に見えます。
晴れていたらもっときれいな景色なんでしょうが、この時の私はとにかく雨が降っていないだけで充分感謝でした。
この場所、実は結構狭くて後ろを振り返ると

岩がそびえ立っています。
歩くスペースも

たったこれだけ。
私がここにいた間は1人だったので大丈夫でしたが、10人ぐらいいたら圧迫感を感じていたかも。
最初の計画ではここで1時間近く休憩してから下りるつもりでしたが、この空模様ではいつ雨が降り出してきてもおかしくありません。
濡れた岩と地面は登るよりも下る方がずっと危険だと本能的に感じていたので、水分とゼリー飲料で栄養補給をして、認証ショットを自撮りしたら即、上って来たばかりの階段を下り始めました。
下りの方が脚に来るって本当ですね。
800段?の階段を下りた後、今度はごつごつ岩をひたすら下り続けないといけなかったのですが、その頃には膝がもうガクガク。
片脚を上げると脚が勝手にぐらぐらして止まらない。でも、平らじゃない岩の、ここと決めた場所に足を置いてふんばらないと、こけたら最後、ころがり落ちてしまいます。
脚がこんな状態になったのは初めての経験で、この時はさすがに1人で行ったことを後悔しました。
ここで怪我をして歩けなくなっても誰も助けに来てくれない。日本に帰れなくなるって。
疲れで頭もぼーっとなりかけていたけれど、とにかく集中力を切らしたら終わりだと思って、岩に足を置くたびに「集中、集中」って言い聞かせながら歩くこと35分、フンドゥル岩に到着。
ここまで来たらもう大丈夫、これで日本に帰れると、マジでホッとしました。
初めての山登りでしたが、私、山をなめすぎていました。無謀なことをしたと猛反省。
旅行は1人で行っても、山には1人で行っちゃダメです。
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