秀作歴史ドラマ「近肖古王」

韓国☆エンタメ

フィクションの部分が含まれているにせよ、韓国の歴史を理解するには歴史ドラマを見るのが一番手っ取り早くわかりやすいと思っています。近肖古王 (クンチョゴワン) は百済第13代王で百済が隆盛を極めた時代の王様ということで興味があり、ドラマ「近肖古王」を見てみました。

このドラマ、2010年の作品なのですが、出演している俳優さん達は他のドラマでは脇役をしている人達ばかりで、いわゆるスター俳優は1人も出ていません。なので、絵画的にははっきり言って華がなく地味です。が、各登場人物の心情まで細かく描写するなどきめ細かいストーリーで、この脚本力で60話最後まで飽きることがありませんでした。

ドラマの前半、ヨグが王の座に就くまでは冷遇され塩商人をしていた時期があったり、身内同士で醜い権力争いがあったり、その争いによりヨグの初恋が悲恋に変わってしまったり、苦難に満ちた人生を送るヨグ。第13代王になってからも、韓半島の統一を目指し宿敵高句麗や周辺国と絶え間なく戦い国土を拡張していく一方で、属国にした後はたとえ部族が違っても優秀な人材は自分の部下に抱え、百済人と対等に扱う度量の大きい王様でした。そのため、国内では貴族を中心とした百済人のみによる百済の統治を目指す反対勢力の抵抗にあい、謀反まで起こされます。ですが、その謀反の首謀者達まで、個人の利得のためではなく百済を思って起こした行動だったからということで、その罪を赦したのです。ドラマの後半では近肖古王の人間の大きさが光っていました。

近肖古王には母親の違う息子が2人いて、この2人も次期王の座をめぐる権力争いに利用されそうになるのですが、この2人がまた信じられないぐらい良くできた息子で、ドラマの終盤ではこの息子達の言動に感動。とても爽やかな気持ちでドラマを見終えることができました。

たまたまこのドラマと並行して百済最後の王第31代義慈(ウィジャ) 王の忠臣階伯 (ケベク) 将軍を描いたドラマ「階伯」を見ていたのですが、この義慈王というのが猜疑心の塊のような人物で、ケベク将軍がひたすら百済の国と民を守るために戦っているというのに、義慈王の権力欲、名誉欲と占有欲のせいで結局百済を崩壊させてしまったという、なんともやるせない話でした。近肖古王があれだけ苦労しながら大きくした国を一人の愚かな男がぶち壊してしまったかと思うと腹が立ってなりませんでした。国を率いる人を選び間違うととんでもないことになってしまうんだなとしみじみ思いました。

話は少しそれてしまいましたが、ドラマ「近肖古王」、60話と長いですが、終盤に近づくほどストーリーに深みが出て惹きつけられました。対立勢力の人達も、近肖古王の立場から見れば行く手を阻もうとする人達ですが、対立勢力側に立ってみると彼らの心情は理解できましたし、どの角度から見ても納得できる、完成度の高い脚本でした。普通ドラマって、あの人どこ行った?あの人どうなった?っていうのが1つや2つはあるものなんですけどね。このドラマではそういった穴が全くなかったです。

特別な期待もなく、ただ近肖古王がどういう人で何をした人だったのかが知りたくて見たドラマでしたが、とても満足度の高いドラマでした。わがまま採点は4.0点。

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