チャン・ヒョクさん主演、2017年の話題のドラマ「ボイス~112の奇跡~」を見終えました。最近韓国で話題になるドラマは3大テレビ局ではなくケーブルテレビ局制作のものが多いですが、これもケーブルテレビ系OCN制作のドラマです。
あらすじを簡単に言うと、日本の110番のように市民が緊急連絡をする警察の緊急通報センターの中にあるゴールデンタイムチームが緊急通報を受けていくつかの事件を解決していく中で猟奇殺人事件に出くわし、その犯人を逮捕するまでを描いた話です。
少し前にドラマ「シグナル」のストーリーが斬新だったと書きましたが、この「ボイス」というドラマも、脚本、設定、演出、すべて今までに見たことのないタイプで、私は第1話から思いっきりハマってしまいました。
まず脚本ですが、チャン・ヒョクさん演じるゴールデンタイムチーム長のム・ジニョクは妻を殺され、緊急通報センター長のイ・ハナさん演じるカン・グォンジュは父を殺された過去を持ち、どちらの事件も犯人不明のまま。
一方、緊急通報センターでは誘拐、児童虐待、性犯罪など、犯罪の種類、被害者、犯人それぞれが全く異なる犯罪の、通報から事件解決までを1話ごとに扱っているように見せかけておきながら、実はそのすべてがつながっていて猟奇殺人事件にたどりつくんです。
それがこじつけではなく納得がいくつながり方で、でも今思い出そうとしても思い出せないぐらい、まるで手品を見ているかのような絶妙なつながり方でした。超緻密に組み立てられた脚本にまずは脱帽、でした。
続いて、事件発生からの10分間の初動捜査が犯人検挙のために一番大事なゴールデンタイムと呼ばれていることから、ゴールデンタイムチームは10分以内に事件を解決する使命を帯びていて、ドラマの画面でもアメリカのドラマ「24」みたいにタイムカウントが出たり、字幕に「現場到着、事件発生後〇分〇秒」といった表示が解決に至るまで何度も経過表示として出てくるので、視聴者もまるでストップウォッチを持って見ているかのような気分にさせらせ、その臨場感と緊迫感はドラマで初めて味わうものでした。
それに、電話って相手から入ってくる情報が声だけじゃないですか。当たり前ですけれど。でも、相手が見えない中で相手の置かれている状況を即理解しないといけない事態に置かれたら、電話機の向こうから聞こえてくるすべての音ー被害者の声、周囲の物音、そして犯人の足音とか声ーにものすごく集中して、電話の向こう側がどういう状況なのか想像しようとしてしまうんです、自然に。それがドラマの中で起こっていることだとしても。
もちろん、私達一般人には見えない状況を想像することなんてできないです。だけど時々画面が切り替わって電話をかけている人側の状況を映像で教えてくれるので、カン・グォンジュと同じレベルで耳から入ってくる情報だけで状況把握ができている気分になれるんです。
これまたものすごい臨場感。とにかくドラマを見ているだけで、知らない間にドラマの中の緊迫感を体験させられてしまうんです。こんなドラマ、初めてでした。
韓国のドラマってラブシーンにしろ暴力や殺人のシーンにしろ制約がきついようで、日本のドラマと比べたらこういったシーンは子供だましみたいなものですよね。それが映画になると、おいおい、そこまで見せるかっていうぐらい激しいラブシーンだったり、目をそむけたくなるぐらいエグい殺し方をこれでもかっていうぐらい見せたりと、ドラマが映画になるだけでどうしてこんなに激しく描写方法が変わるのか、私には全く理解不能。
それがこの「ボイス」ではメインは猟奇殺人なのですが、その猟奇ぶりの演出は韓国ドラマとしては異常なレベルでした。ケーブルテレビで誰でも見られるドラマではなかったというのもあるでしょうが、それにしても血しぶきが飛び散ったり、骨が砕ける音だったりがものすごくリアルで。
それにこの猟奇殺人をやったサイコパスを演じたのがあの俳優さんで。
ネタバレしないをモットーとしているので誰とは言わないですが、このドラマを見た人は多分みんな驚いたと思います。私はあの俳優さんは昔からかなり好きだったしこのドラマに出演していたことを知らなかったので、最初に画面に横顔が映った時「えっ、あの人? まさか? うそでしょ?」とプチパニックを起こしたぐらい。
これがまた、いいのか悪いのかよくわからないのですが、ハマってるんです、見た目は普通だけど裏ではとんでもないサイコパスっていう役柄に。サイコパスっぷりは「リメンバー」のナムグン・ミン君に並ぶすごさでした。
そして主演のチャン・ヒョクさん。口は悪いけれど正義感に満ち、でも心に傷を持った熱血警察官、こういう役をやらせたらこの方天下一品ですよね。たまに両班とか御曹司の役とかもされますが、そっちの方はどうも違和感があって😛
ドラマのエンディングの後、通常なら制作風景やスタッフの人達との写真やNGシーンなどが流れるところで、このドラマでは脚本家の方からの「・・・無念のまま亡くなる犠牲者がこれ以上出ないことを切実に願いながらこのドラマを作りました」というメッセージが流れるのですが、「これ以上」という言葉にドキッとしました。
それでちょっと調べてみたところ、どうやらこのドラマの一部は現実に起きた事件に基づいて書かれたようです。どの部分なのかはわかりませんが、もし事実が含まれていることを知った上でこのドラマを見ていたら、私が感じた臨場感や緊迫感はもっと生々しいものになっていたことでしょう。
視聴者に犯人を明らかにしてしまうタイミングがちょっと早すぎて、犯人がわからない不気味さを途中から感じられなくなってしまったのは残念でしたが、特にドラマの前半では今までに感じたことがない緊張感を持ってドラマを楽しむことができました。ということで、わがまま採点は
点。
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